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４番札所から35番札所への道は、錦鯉の泳ぐ「いこいの小川」が話題となりますが、歴史好きはドウノモトを取り上げたくなります。 遍路道の途中、右手の田んぼの中にある少しこんもりとした一画で、石塔と梅の木が立っています。ドウロモトとも言われますが、堂ノ下と書いたのでしょうか。塔ノ下、堂ノ元、唐ノ基かもしれません。専門家は古墳ではないかと見ています。また、上に立つ石塔は16〜17世紀のものと思われ、いずれにせよ、かなり古い由緒を持つことは間違いありません。 さて、35番札所は珠林寺にあります。現在は南蔵院をはじめとして遍照院や延命寺など、お寺が札所になっていることは珍しくもありませんが、篠栗四国が誕生した頃は、お寺の札所はこの珠林寺だけでした。珠林寺にその気があれば、今頃は篠栗四国の総本寺となっていたことでしょう。 珠林寺は金出山放光院と号しますが、明治22年（１８８９）に荒巻幸右衛門さんが発行した地図を見ますと、かつては金出寺と通称されていたようです。篠栗四国が誕生した頃は４番・35番・86番の３ヶ所を受け持っていたと思われます。 そのうち前２ヶ所は、明治30年（１８９７）に桐生源四郎さんが記録した「明細帳編入願再出願控」によると、天保六年（１８３５）八月の開創となっています。つまり、藤木藤助が篠栗四国を完成させる以前に、発起人の慈忍尼が造顕した石仏像を祀っていたと推測できるのです。 
現在も珠林寺で大切に守られている35番札所の石仏は、発起当初のものだと思います。篠栗四国黎明期の本尊像は、私たち研究者の間では天保仏と呼ばれていますが、天保仏を祀った札所は、１番札所など、わずか17ヶ所だけでした。それら少ない天保仏も、現在は多くが行方不明です。35番の薬師像は保存状態も良く、今でも後背に銘文を読み取ることが出来ます。薬師像の右上には「三十五番」、左上には「上座郡星丸村恵助」と刻まれています。どうやら、この石仏は現在の朝倉市杷木星丸に住んでいた恵助さんという方が建立資金を奉納したようです。 しかし、なぜ篠栗から遠く離れた杷木の人が仏像を寄進したのでしょうか。篠栗から本場の四国霊場へと向かうには、杷木を経て大分県に入り、豊後水道を佐田岬へと船で渡る道もありました。慈忍尼は四国遍路の帰路に篠栗を訪れたという伝承もあります。このあたりに篠栗四国開創の謎を解く鍵がありそうです。 |
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日仏共同篠栗民俗調査団 中山 和久 |