田中の本明院裏手から納骨堂の脇を抜けるのが昔ながらの遍路道です。
多々良川に出て川沿いに上流へ進むと、左手に「遍路と金剛杖」の説明板があます。お遍路さんが橋の上で杖を突かない理由などがわかりやすく書かれています。
高田橋は平成元年に再建され、笠に杖の白装束が行き交う粋なデザインが施されました。橋を渡り終えるとすぐ右手が高田虚空蔵堂です。
境内入口には地蔵堂があり、大きな導地蔵と、小さな延命地蔵２体の石仏が祀られています。
導地蔵は静かで穏やかな表情が印象的で、見ているだけで心癒される気がします。優れた仏師の作品なのでしょうが、残念ながら作者銘は確認できませんでした。「導地蔵大菩薩」の銘も崩落が激しく、判読に苦労しました。貴重な文化財だけに一刻も早い保護が期待されます。
台座には導地蔵を奉納した施主や世話人など多くの人々の名前が刻まれています。左側面の１行目には「金六円　大正六年四國順拝箱崎同行中」とあります。この銘文から、導地蔵は大正６年に奉納されたことがわかります。
四国順拝箱崎同行中とは、箱崎（福岡市東区）在住で四国を巡礼する仲間たちという意味です。「四国」については、徳島・高知・愛媛・香川にある四国八十八ヶ所霊場を指すのか、篠栗四国霊場のことなのか、まだ調査していませんが、毎年春には篠栗四国を、数年に一度は本場の四国を巡っていたのではないかと想像されます。
彼らが奉納した６円は施主の中では最高額で、以下３円、２円と金額順に施主の名前が刻まれています。箱崎の人が中心になって奉納したようで、箱崎町今福の多田マサさんが３円、箱崎町原田の山口善二郎さんが２円を奉納しています。
地元高田からは長澤ミツエさん、藤フヨさん、森ケイさん、柳池ヨシノさんの４名が合同で２円を奉納しています。
右側面には、彼らの奉納のお世話をした篠栗の方々が刻まれています。判読できたのは、多田次平、藤浅次郎、萩尾佐一郎、長澤治兵衛、中山吉次郎、多田藤兵衛、多田善兵衛、渋田彦太郎、多田七三郎、川嶋善吉、立石又吉、松井清作、舟越亀吉、高橋喜七郎、古屋徳五郎、長澤萬吉、井浦才吉、柿木組合中、柳池鶴吉、因信吉、内川愛道、以上21名でした。篠栗の先人達の善行をぜひ知っておいて下さい。

日仏共同篠栗民俗調査団　中山 和久